習慣流産における遺伝子医療の関与着床前診断を含めて

摘要

習慣流産の約5%は夫婦どちらかの染色体均衡型転座が原因である.また，夫婦は正常核型であっても胎児 染色体数的異常が約40%を占めている.これらは一定の確率で出産に至っている.これらに対して流産予防 のために着床前診断(PGD)が行われているが，PGDと自然妊娠を比較した研究はなく， PGDによって出産率 が改善するという証拠はない.転座の場合は自然妊娠と同等，胎児染色体数的異常の場合は自然妊娠のほうが 出産率が高いのが現状である.胎児染色体正常の真の原因不明習慣流産は約25%であり，遺伝子変異が多数 報告されている.しかし，それぞれの習憒流産関連遺伝子の次回妊娠への影響は小さく，臨床的に調べる意義 は確立されていない.