クレーン等の保守点検における非破壊試験(6)

摘要

材料の表面に開口している割れは，元来，試験技術者の目視試験によって，検出されるべきであろうが，割れの周囲が同色であれば，微小な割れは検出しづらい。このような場合には，選択的に割れの部分に染料が集まり，周囲の色と容易に識別でき，かつ，割れの幅を増幅した探傷模様を提供できる探傷方法があれば，微小な割れの検出に都合がよい。磁粉探傷試験法は，探傷対象物が鋼材等の磁性体に限られるが，この要求を満たす探傷法である。この探傷方法のメリットは，概ね次のとおりとなろう。①割れ検出能力が高い。②複雑な形状を持つ部品への適用ができる。 ③使用機材が簡単である。 ④消耗性材料が少ない。 ⑤探傷模様が経過時間によって変化しない。また，デメリットとしては，次のとおりであろう。①この試験方法が適用できる材料が，鋼材など保磁力を持つ磁性体材料に限られる。 ②磁化の方向がきず検出能力に大きく影響する。 ③殆ど手作業で試験を行う関係から，探傷結果は試験技術者の知識と技量の影響を大きく受ける。 クレーン等の設備では，多くの部分に鋼製品が使用されているので，これらの保守試験に際しては，この試験法が適用される場合も多いと思われる。