首都圏における同時多点電源周波数変動観測に基づく観測地点の推定

摘要

本報告は、首都圏内7箇所で商用電源の瞬時周波数（ENF）を解析信号を用いて求め、それらの変動の類似度と6箇所の位置関係から、残り1箇所の位置を推定する手法を検討する。この手法は、任意の録音に含まれるENFからその録音位置を推定する法科学的基礎となる。先行研究では、地点間での0.26Hz以上のENF変動成分の地点間時系列相関から、未知の地点が2点のどちらに近いかの推定を重ねる手法が提案されている。今回の観測地点間距離の最大は先行研究の1/10程度（62.5km）であり、従来手法を用いて10%未満の正判定率しか得られなかった。本報告では新たに、ENFを短時間周波数分析し、成分の時間変動の相関に基づく地点間非類似度が、観測点の距離関係と最も高い相関をもつ0.4から1Hzの変動を用いて、線形回帰と推定距離誤差最小化によって位置推定を行った。その結果、10分間の電源周波数変動から平均誤差が20から30km程度の位置推定が可能であった。