管見 太平洋戦争の再考覚書（第9回)

摘要

ヨーロッパで第二次世界大戦が勃発すると、アメリカの指導者たちは自国の対外情報活動体制の不備に気づいた。当時、陸海軍の情報部門は軍事活動分野に特化し、政治、外交、経済に関する情報活動能力は限定的であり、他方、国務省は外交·戦略情報に関心を持ちつつも、秘密手段による情報収集活動に踏み込んでいなかったからである。こうした不完全な対外情報活動体制を一新するため、ルーズヴェルト大統領は、コロンビア大学時代の同級生ウイリアム·ドノヴァン大佐（後に少将に昇進）に命じてCOI（情報調整局）を設置したが、この組織は1942年に分割された。国内及び連合国向け宣伝活動はOWI（戦時広報局、なお、戦時情報局とする文献もある）、中南米を対象とした情報分析·宣伝活動はOCIAA（米州諸国間問題調整局）が担当し、対外情報収集·分析に関する中心的役割と秘密＝作·特殊工作、対敵国宣伝を担当するOSS（Office Of Strategic Service、戦略事務局または戦略情報局と訳されている）が、ドノヴァンの下に設置された。