システムとしてのィ力釣り漁業

摘要

近年の燃油の高騰と魚価の低迷により.我が国の沿岸 漁業経営は危機的状況に陥っている卜3>。その中でも， 沿岸ィ力釣り漁業は長距離の漁場移動と，夜間操業に用 いる高出力の漁灯による燃油消費が多く，効率的な操業 方法の構築が望まれている漁業種である4)。今後.余力の小さくなってきた沿岸ィ力釣り漁業経営体が存続して いくには，社会情勢の変化に対応し，状況に応じて最適 な操業を行うことが有効であると考える。このような状況に対応すべく.様々な研究機関により船速の低減による燃費削減.ィ力釣り漁灯のLED化や 水中漁灯の導入.漁灯の減灯や点滅操業.漁獲物の高鮮 度化による魚価向上等の研究開発や，イカの対光行動の 把握やィ力資源量の分布予測といった科学的知見の蓄積 が行われている。しかしながら，操業船上においてこれ ら個々の知見と漁業者の経験を組み合わせ，時々刻々と変化する漁場条件や社会情勢の変化に対応して，より経 済的な操業方法を選択していくのは困難である。