低SHF帯チップインダクタ結合リコンフィギャラブルバンドパスフィルタの設計と試作

摘要

近年，ワイヤレス通信の大容量化への要求はとどまることなく，新たな周波数資源の開拓と周波数資源のより効率的な利用が課題となっている．すでに第4世代移動通信（4G）では複数周波数帯域を用いるキャリヤ·アグリゲーション（CA）が導入されているが，第5世代移動通信通（5G）では新周波数帯を含むさらに複数の帯域を組合せた周波数利用が検討されている．筆者らのグループは，複数の周波数を柔軟に選択可能な伝送線路切替型リコンフィギャラブルバンドパスフィルタ（BPF）をこれまでに提案し，2-3GHzの8周波数切替可能なBPFを集中定数結合素子との組合せで設計·試作している．今回，5G以降で利用が想定される低SHF帯への対応を考慮して，通過帯域を3.5-5GHzへと高周波化した8周波数切替リコンフィギャラブルBPFについて検討した結果を述べる．高周波化に伴い，集中定数結合素子の自己共振周波数やチップ素子の物理的寸法が特性に影響するので，初期検討としてチップインダクタ結合による設計を行い，回路試作及び測定によって特性を評価した．試作回路の中心周波数可変範囲は3.1-4.6GHz，比帯域幅は約10%であり，これに対して挿入損失は0.99～2.75dBが得られた．