小型全反射蛍光X線分析装置を用いた微量カドミウム分析

摘要

全反射蛍光X線分析法は，微少試料に極微量含まれる元素の分析を可能にする。原子吸光分析法（AAS），誘導結合プラズマ質量分析法（ICP－MS）や誘導結合プラズマ発光分析法（ICP－AES）と同様の試料調製により測定を行うことができるが，溶液分析に際して必要な試料量はμL量である。また，固体試料の酸分解など試料調製に要する試薬も少なくすることが可能なので，環境にやさしい分析法であるといえる。全反射蛍光X線分析では，高強度X線源の使用が高感度分析を行うために必要不可欠とされ，大型シンクロトロン放射光施設を利用することで，3d遷移金属元素においてフェムトグラム（10~(-15)g）量の検出下限が達成された。一方，2000年以降，40から50WのX線管を用いた卓上型全反射蛍光X線分析装置により数～数十pg（10~(-12)～10~(-11)g）の検出下限が得られ，強力X線源を使用しなくても極微量元素を分析できることが明らかにされた。全反射蛍光X線分析法による溶液分析では試料台に滴下乾燥したものが分析対象となるため，検出下限として重量に換算した数値が通常示される。