中性子実験用高圧装置

摘要

本特集では中性子の性質，発生方法，中性子回折の測定方法，さらに高圧中性子回折の研究例が紹介され，高圧力と中性子の組み合わせは，新しい研究フロンティアの開拓が期待される，大変魅力的な試みであることが示されたと思う。 それでは実際に，"どのような高圧装置を中性子ビームラインに導入するか"について本稿で検討したい。 装置開発を始めるに当たって，まず中性子を使って高圧下で何を調べたいのかを明確にする必要がある。 弾性或いは非弾性散乱，低温或いは高温，粉末或いは単結晶試料等々の因子が挙げられるが，汎用性を持たせた装置の開発は検出器との兼合いも含めてあまり賢明ではないようである。 J-PARC物質生命科学実験施設に対する装置提案書では「15万気圧，2000℃もしくはそれ以上の超高圧，高温条件下での中性子回折その場観察技術の導入」が提案されているので，本稿でもこの条件に沿って，粉末中性子回折実験用の高温高圧発生装置を考えてみたい。