慶應大学輪読会

摘要

五十五歳の婦人、四十日前より蓴麻疹が出るようになり、医師より注射を二十本もうけたが、全く効がないといつて来院した。この患者には蓴麻疹のほかに、夜間の咳嗽があり、下痢もしている。それに食欲もなく、手足も冷える。脈は沈で、臍上の動悸が亢進している。以上の状態であったから、真武湯を与えたところ、一週間の服用で、蓴麻疹は出なくなり、下痢もせきもやんだが、念のためにあと三週間分を服用せしめた。ある日、四十一歳の婦人が胃腸がわるいから診てくれといって来院した。この患者は、やせて血色がわるく、冷え症で、最近は蓴麻疹が出るようになったという。その蓴麻疹は小さいもので、隆起も著明でないが、かゆみはある。ときどき下痢をし、疲れやすいという。こんな症状であったから、私は真武湯を与えたが、七日分をのみ終って来院したときは、蓴麻蔘は、すつ 力りよくなっていた。