有機薄膜太陽電池の研究と発展

摘要

二酸化炭素による温暖化や酸性雨などのグローバルな環境問題を契機として，環境を汚さない新しいエネルギー資源開発が強く求められている．太陽光に依存している生命現象や化石燃料などの自然界のエネルギー循環や，熱力学第1法則（エネルギー保存の法則）と第2法則（エントロピー増大の法則）を考えると，今後エネルギー多消費型の文明を維持してゆくには，太陽光エネルギに頼るのが最も自然の理にかなっている2）．既に進められている風力発電やバイオマス（発酵）も間接的な太陽エネルギー利用といえるが，直接的に太陽エネルギーを電力に変換できる太陽電池がなんと言っても注目される．半導体太陽電池は実績はあるがコスト高のため普及がもう一つ進まない．一九全く新しい原理による，コストの安い色素増感太陽電池が盛んに研究開発され，実用化も一部始まっている．また，高分子薄膜だけで変換効率3％を越える素子も発表され，注目されている．本解説では，このような現状のもとに，有機薄膜を用いた光電変換素子と太陽電池のこれまでの研究と展開をまとめる．