傾斜計データのインバージョン解析によるフラクチャの推定

摘要

本研究では，地表面に発生する傾斜量を逆解析す量ることによって，地下のプラクチャに関する情報を得る非常にロバストな手法の確立を行った．ここで提案したカスケードインバージョンは従来の手法と異なり，非線形最小二乗法と制約附き最小二乗法を用いた2段階のインバージョン解析であり，フラクチャの傾斜角，走行のみならず，その形状．開口量分布を求めることが出来た．また本手法を米国の油田における水圧破砕で形成される開口型プラクチャに適用したところ，充分満足するフラクチャに関する推定結果が得られた．この結果，本手法は水圧破砕のモニタリング技術として非常に強力である事が分かった．また本解析手法の適用範囲は単にフラクチャのみではなく，地中における変形の逆解析において，非常に有力な方法首あると考えられる．これらに関しては個別の問題として検討を重ねたい．本論文では解析に当たって，地下構造は均質な半無限弾性体と仮定したが，実際には解析対象とする地下は不均質であり近傍には断層の存在等が考えられる．その意味で本手法は，地下構造が非常に複雑な場合には精度的に問題となる可能性が考えられる．しかしながら一般に不均質な構造の影響は，変位量に関しては有意であるが，変位の傾きである傾斜量に関しては比較的小さいと考えられる．この点からも傾斜計の利用は優位と思われる．無論将来的には，不均質な地下構造を取扱える解析手法の開発が必要であると考えている．最後に本稿をまとめるに当たって，匿名の査読者より有益なコメントを得た．ここに感謝の意を表します．