貴農論を唱えた農政学者新渡戸稲造

摘要

江戸末期、東北.南部藩の武士の家に生まれた新渡戸稲造。青森の三本木原開拓や土木事業、都市整備を手掛けた由緒ある新渡戸家らしく、稲造は幼少から武術や漢文に親しみ、武士の教養を肌で習得していた。その反面、早くも英語を学ぶなど、先を見据えての教育を受けていた稲造は、父の死後わずか満九歳で叔父を頼って上京し、勉学に励んだ。叔父の養子となって太田姓を名乗り、最年少の十四歳にして東京外語学校英学科で学んだ後、家業とも言うべき開墾を勉強するため札幌農学校へと進んだ。開校まもないこの学校はクラ—ク教授が学長となり英語で授業を行い、キリスト教精神を反映させた西洋風の最新教育機関だった。稲造もまた、多くの学友とともに洗礼を受けた。