鹿児島第2試験地

摘要

蜃気楼にゆられるように黒い点が大きくなり，やがて，熱射を避けるため，全身をマントにくるまった馬上の若武者が，砂漠の砂を巻き上げ画面の中央に踊り出てきた。 その一瞬であったろうか。 言いようのない自己嫌悪と両親への申し訳なさに涙が頼を伝わり，肩の重さにいたたまれず，最後まで観ることが出来ないまま，映画館を退館した。 今頃，父と母は汗だくになって灼熱の太陽を背に受けながら田の草取りをしている頃なのに，自分は冷房の効いた中で映画鑑賞に耽っている。 その思いが身体全体を硬いつくし，自分を許せずその場に座り続けていられなかった。