Present status of the studies on protozoan and other parasitic diseases of fish in the world [Japanese]

摘要

魚病関連の国際誌5誌に最近5年間に発表されたもののなかから，魚類の寄生虫病に関する論文を検索した。関連論文の約半数がサケ科魚類の寄生体を扱ったものであった。 魚類の寄生虫病においても，新興，再興性疾病が目を引く。 新興性疾病としては，“アメーバ性鯉病”（Amoebic GilI Disease＝AGD）が挙げられる。原因体はNeoparamoeba（＝Paramoeba）pemaquidensisとされるが，複数種が関与している可能性もある（Dykova et al．，2000）。 宿主特異性は低く，海面養殖のサケ科魚のほか，ターポットScophthalmus maximus，ヨーロッパスズキDicentrarchus labraxにも寄生する。 罹病魚の死亡率は高い。 本病は日本では未知であるが，宿主特異性が低く，地理的分布が広いことから，警戒すべき感染症と思われる。再興性疾病としては，アメリカ合衆国西部の山間部地域のニジマスに流行している，粘液胞子虫のMyxobolus cerebralisが引き起こす旋回病とノルウェーの天然および養殖タイセイヨウサケにおける卑生類Gyrodactylus salarisの寄生虫症が挙げられる。いずれの再興性疾病においても，流行の原因は当該寄生虫に感染した魚を未侵入の水域に人為的に持ち込んだためと考えられている。