第5部 昭和戦時下の駆逐艦

摘要

昭和12年の軍縮条約失効によリ，日本海軍は制約なしに理想的な大型航洋駆逐艦の完成と勢力充実に注力した。その対象は特型以来の凌波性に優れた魚雷襲撃昼夜戦艦隊駆逐艦（甲型）で，航空機と潜水艦の脅威に対する考慮は乏しかった。空母直衛用に優秀な防空火力を備えた秋月型（乙型）も建造したが，その機能の一部を艦隊駆逐艦に導入することはなかった。九三式（酸素）魚雷の装備や高速強雷装艦島風の試作もあり,艦隊駆逐艦の勢力と性能は緒戦期に絶頂に達したが，装備に適さぬ想定外の戦闘が多く損耗を重ねた。そのため対空•対潜能力と急速量産性重視の松型建造に転換，好成績を得たが遅きに失し終戦を迎えた。第5部にはこの間に就役した5艦型93隻を紹介する。