米国の健康保険医療制度の愚かさ

摘要

先進国の中で唯一米国の健康保険制度だけが国 営でなく民営であることは，一般の日本人にも良 く知られている。また，米国の医療費が他のどの 国よりも高いことも良く知られているだろう。具体的に言えば，2016年度の一人あたりの年間平 均医療費は，日本が$4,152,フランスが$4,367 と似たような額だが，米国の平均医療費が OECD諸国の平均の2倍以上の$9,024と抜きん 出て高い。総医療費額を国内総生産（GDP)の 割合で計算すると，日本が10.2%,フランスが 11.5%,米国が17.1%と，またしても米国で医療 費がとにかく高く，国民への経済負担が著しく大 きいことが理解できる。その割には，米国の医療 制度の「成果」は良くない。平均余命，出生時の 死亡率，医療費用等で医療制度の良し悪しを考慮 した世界保健機関（WHO)の調査によると，フ ランスが世界で一番高くランクされ，日本が10 位，アメリカは何と37位で先進国としては最下 位である。米国の健康保険制度は民営だけに，国 民全員が健康保険に加入しているわけではない。 ォバマ前大統領が導入した「手頃な保険制度」 (Affordable Care Act)のもとで，健康保険に加 入していない人口はかなり減ったにしても，未だ に11%の国民は健康保険に加入していない。コ ストが高いため，低所得層の44%に当たる米国 人は医療へのアクセスが困難である現実も知られ ている。なぜ先進国の中で米国の医療制度がこの ように非効率で不公平になってしまったのかに関しては既に言及されていることなので，このコラ ムの中では再度言及しない。