用廃水豆知識

摘要

生物の生存増殖には，生体内代謝による適正なエネルギー•物質循環が必要である。生体内代謝で従来から重要な反応といわれているのが，嫌気性生物や好気性生物に共通する，たとえば，ブドウ糖をピルビン酸にする解糖反応（一般的にATP2分子生成），ピルビン酸を起点とするTCA回路（クエン酸回路；Citric Acid Cycle）における補酵素NAD~+，FADによりNADH_2~+やFADH_2の形で捕捉された水素が,ミトコンドリアのクリステという場において順次エネルギーが低くなるような一連の酵素系（複合体Ⅰ～Ⅳとよばれる発エルゴン反応）の連鎖を経て（自由エネルギー：G＜0；すなわち，負では反応は自発的に進行する），最終受容体である酸素（O_2）に渡されて水H_2Oになる反応である。この過程でCO_2の生成が起こる。複合体Ⅰ～Ⅳにおける発エルゴン反応とATP合成の連開は，化学浸透共役（Chemiosmotic coupling）とよばれる。大腸菌のような酸素呼吸を行なう細菌はミトコンドリアをもたないが，呼吸鎖は図1に示すように存在する。ミトコンドリア内膜に相当するのが細胞膜であり，そこにはミトコンドリアの複合体Ⅰ～Ⅳに相当する酵素群やF_0とF_1で構成される複合体Ⅴもある。電子伝達系で，細胞質中のH~+は細胞外へ汲み出される。細胞内外のH~+の濃度勾配で生じる化学ポテンシャルを利用してATP合成を行なうのも同じであるが，合成されたATPは当然ながら細胞内にとどまる。