高濃度硫酸塩を含むエタノール•酢酸系化学工場排水のUASB処理に及ぼす有機物濃度変動の影響

摘要

本研究では，排水組成の変化が化学工場排水の嫌気性処理におけるメタン生成と硫酸塩還元に与える影響を把握することを目的とし，中温UASBリアクターを用いて，排水の主成分である酢酸とエタノールの濃度を変化させた連続実験を144日間行なった。酢酸が主成分の条件では，効率的にメタン生成が行なわれ，硫酸塩除去率が比較的低い水準に維持できた。エタノール濃度が3,000mg/lに達すると，硫酸塩除去率は83.3%の高い値に上昇した。エタノール•酢酸濃度の割合が3,000mg/l:1.000mg/lの場合には硫酸塩除去率は97.6%に達するとともに，メタン生成の阻害がみられた。活性実験により未解離性硫化物がメタン生成活性に阻害影響を与え，その半数阻害濃度は約347mg/lであることが明らかとなった。また，連続実験でのリアクターのVFAの蓄積をもたらすエタノール3,000mg/lの条件において，未解離性硫化物濃度は169mg/lに達し，メタン生成阻害率は35.1%に達することがわかった。