湿潤温暖地域における山地の排水システム•斜面崩壊•ハゲ山

摘要

ハゲ山に関しては，千葉徳爾氏や小出博氏などによる先駆的な研究があるが,どちらかと言えば人文地理的な研究対象と考えられており，自然科学的な研究はあまりなされてこなかったようである。1980年代後半から1990年代にかけて,主に砂防学や森林学の研究者の間で，「一昔前に比較して，最近表層崩壊が少なくなったのではないか？それは，以前に比べて森林が回復してきたためではないか？」といった認識が徐々に広まっていった(太田，1998;塚本，1999など)。そして，土砂災害に関する自然科学の分野においても，ハゲ山の歴史や，ハゲ山と斜面崩壊の関係などが改めて注目されるようになった。これまで自然現象と捉えられていた斜面崩壊に対して，実は人間の影響が大きく関わっていた,という認識は，少なくとも筆者にとっては驚きであった。