腐食促進試験に基づく鋼部材のコンクリート境界部における経時腐食挙動の基礎的検討

摘要

本稿ではコンクリートとの境界部を有する鋼板のモデル試験体を製作して，その複合サイクル腐食試験(JIS K5600-7-9のサイクルD)を行うことで，鋼部材のコンクリートとの境界部における経時腐食挙動について検討した結果を紹介した。本検討で得られた主な知見を以下に示す。(1)コンクリートに埋め込まれた鋼板のコンクリート内部への腐食の進入深さは，進行性がほとんど無く，鋼板とコンクリートの肌隙深さ程度になる。(2)鋼板とコンクリート境界部近傍における鋼板の腐食は，600cycle以内では全面腐食，それ以降では境界部近傍が局所腐食する腐食形態に移行する。コンクリート境界線近傍に生じる最も著しい局部腐食は，境界線から数mm上部に発生する。(3)最大腐食深さは腐食サイクル数と比例関係にあり，一般部の全面腐食の平均腐食深さの約10倍となる。一般部の最大腐食深さについては，1200cycle以降ほとんど増加しない。(4)境界部における腐食深さは，腐食サイクル数と線形関係にある。この関係を一般部の平均腐食深さを用いて定式化した。これまで，著者らは本稿の鋼部材のコンクリート境界部の経時腐食挙動に関する基礎的検討を実施した後に，境界部の経時腐食に伴う応力集中や疲労耐久性の評価手法を提案している。また，空間統計学的手法を用いた腐食損傷の経時予測シミュレーション,非破壊検査技術や腐食センサも開発している。さらに，境界部の犠牲陽極による防食技術の開発にも取り組んでいる。