スイスの小さな町

摘要

1988〜1989年にかけてスィスに滞在する機会があり，当時住んでいた小さな町Laugerrnの思い出を書いてみた。Laugerrn,おそらく原子力発電関係の技術者しか知らない日本人には緣のない街と思う。水鳥が集うライン川沿いの小さな町で，休日はこの川沿いの遊步道を家族連れが散步する静かな町である。雰囲気は日本では北海道の豊富町あたりの丘陵地带に似ている。この町と緣ができたのには理由がある。不動產屋がないこの国では，ァパートを探すには，その地方新聞の赁貸情報をもとに探さなければならない。Zurichのような大都会は別として，地方では新間から良い物件を見つけることが一般的だが，見つけても日本人（アジア人という意味だつたかもしれない）だめとか，バスタブがない（私のわがまま）とか，魚焼くからダメとか色々あって，アパートを見つけるのは一苦労であつた。この町に住むGassmannさんが快くアパートを貸してくれたのは幸運であつた。Gassmannさんはドィッ語しか話さなかったけれど，日本のことをよく知っていて親切にしてくれた。そのアパートは，外裝は木造でまあ「古い」のであるが，私の部屋の中は真新しくリニューアルされた2階の角であった。キッチンほか台所，バス，トイレは新品，電気オーブンと全自動洗濯機付き，給湯以外はォール電化住宅であった。自慢は風呂と広いベランダである。風呂は，湯船があって天井に出窓がついていて，湯船につかって星空が見えるというもので，素晴らしい。ベランダは80 m~2 くらいでホームパーチィーは樂にできる。1LDK (ベランダと同じくらいの広さ）の部屋のアパートの家賃は，月額650 SFR(1SFR = ¥80(当時）として52 000円，記憶では？？）だった。私を訪ねた方は（妻も含めて）外観で「ここ？」と聞くけれど，中の立派さに驚く。 Laugerrnには，大きな教会があり，ァパートの住所がKirch Platz1というところで，まさに教会の前という場所にあった。1時間ごとに教会の鐘が時間の数だけ鳴る。ところで，普段静かなこの町も12月にはにぎやかになる。スイス陸軍の演習場が小高い丘の向こうにあり，12月には決まつて大演習がある。兵役のあるこの国で，永世中立を守るための陸軍の演習，戟車が道を渡り，砲声が夜も響き渡る。多くの自動小銃を抱えた陸軍兵士が町に来て，士官クラスと思われる方は私も利用する唯一のレストランでワインを飲み食事をする。さて，アパートの周りには，小学校と小さなスーパーマーケット（Migros)それにGast haus (レストランとパン屋）と銀行があり，一通りのものは揃っている。その他，近くのライン川沿いの2 kmほど先にはLeibstadt原子力発電所があり，クーリングタヮーから流れ出た水蒸気が風向さによってはべランダ近くまで来るような気がする場所でもあった。アパートの部屋には温水循環暖房が設置され，冬は一日中あたたかく，中では半そでで過ごせる。冬の長い夜は，雪が降り積もるのを見ながら暖かい部屋でチーズとワイン，仕上げにブランデーは最高である。夏は，クーラーは不要であるほど涼しく，ベランダにテーブルを出して明るい夜を满喫し，食事がでさた。ドイツ語圏なので，ビールは豊富であり，地ビールであるBadenerと地の赤ワイン(スイスワインは白が有名だが，なぜかここは赤ワイン）Dettinngenerを飲んでいた。また，チーズは色々安く手に入れ食べた。生ハムもいくつかあったけど私はプルマが最もおいしいと信じてこればかり。それよりも今食べたいのは，隣のGast hausで朝3時からパンをこねて焼いて7時には焼き立てを壳つていたフランスパンである。日本でいうバタールに似ている（ドィッ語名を忘れてしまった）が，おいしくて每朝1本食べていた。もうーつ,Baden駅の南側にあるパン屋のGepfli (スイスのクロヮッサン）である。バリツとした食感とバターのさいた舌ざわり，最高でした。この2品はこれまで食べたどのパンよりもおいしかった。あれから30年がたつた。ZurichやBernに行く 機會はあったものの，Laugerrnまでは足を延ばせずにいる。当時あった国鉄線も廢止となり，バスになったとか聞く。ここに行くと決意して計画しないとなかなか行けない。6月頃の最もきれいな季節に思い出の町Laugerrnを訪問し，少し滞在して当時の思いに浸りたいものと強く願っている。多分，当時のままの町の絵が頭に浮かぶが，はたしてどのように変わっているか，楽しみである。