函館漁港•船入澗防波堤

摘要

近代港湾工学の父と呼ばれる廣井勇博士の業績としては，1908年（明治41年）に建設された小樽港北防波堤（土木学会選奨土木遺産•第1号）が日本初の本格的コンクリート防波堤としてよく知られているが，そのコンクリート技術が面館の地で培われていたことはあまり知られていない。船入澗防波堤が位置する函館漁港とその周辺の地区は，1896年（明治29年）6月 21日から，1900年9月にかけて行われた「函館港改良工事」で整備された。工事に先だって行われた函館港湾調査は，港内深浅測量，海底地質調査，潮流調査，セメントおよびコンクリート試験を1890年（明治23年）から1894年にかけて実施しており，廣井は北海道庁の技師として1892年から参画している。廣井らが記した「面館港湾調査報文」では，付録の部分の大半を「セメント及混凝土試験丄「セメント性質試験方法」の記述に費やしている。