有珠山の火山砂防:噴火経験に基づいて展開する土砂災害対策

摘要

多くの火山では地域の人々が噴火とそれに伴う土砂移動現象を経験することはまれである。そのため，災害現象をイメージしづらいことから具体的対応策の構築が難しい。国内でも有数の活動度をもつ有珠山は20世紀に4回の噴火履歴(1910年，1943～45年，1977～78年，2000年)がある。1977～78年噴火はこれら4回の中で唯一の山頂噴火であり，山体周辺に大きな被害と影響をもたらしたことから，この噴火災害を契機に本格的な防災対策が始まった。さらに2000年噴火では山麓噴火を経験し，その噴火推移や土砂災害の実態に即したシナリオが立てられ，地域防災計画を基本とする火山防災対策が策定され，土砂災害対策である砂防計画も見直された。