平成28年度（公社）日本水環境学会論文奨励賞（廣瀬賞)受賞者

摘要

本論文では，次世代シークェンサーによって下水中のノロウイルスの遺伝子型 を解析すると共に，集水域で発生した胃腸炎の患者の糞便から検出されたノロウ イルスの遺伝子型との比較が行われ，下水中の病原体由来の遺伝子情報を集水域 における疫学情報に準ずる情報として扱うための方法論が検討されている。比較 の結果，実際のノロウイルスの流行状況が下水中ノロウイルスの遺伝子型に反映 されていることを示し，下水試料に含まれる腸管系疾患のウイルスの分析結果か らその流行状況を予測できることを明らかにした。さらに，新たな系統と予想さ れるノロウイルスも見出している。このように，次世代シークェンサーによる病 原体遺伝子の分析結果と疫学的な情報とを組み合わせたアプローチは当該研究分 野において先導的であり，得られた研究成果は下水モニタリングの新たな有用性 を明らかにした。