簡易動的コーン貫入試験機

摘要

簡易動的コーン貫入試験機とは，地盤の原位置における貫入抵抗を簡易に求めることを目的に開発された試験機です。図中の(a)は簡易動的コーン貫入試験機の概要を示しています。本試験では作業員が人力で質量5 ± 0.05kgのハンマーを500 ±10mmの高さから自由落下させ，地盤内にコーンを100mm打ち込むのに必要な打撃数を数えます。この打撃数が地盤の貫入抵抗(N_d値)として評価されます。このように地盤の貫入抵抗を把握することで，外観から判断できない地盤の固さといつた原位置における地盤内部の状態を捉えることができます。鉄道の斜面防災を考える上では，このように地盤内部の状態を把握する調査手法は欠かせません。また本試験機は総重量が10 kg〜15 kg程度と携帯性に優れ,取り扱いも容易といったメリツトがあります。このため本試験は急峻な斜面における表層土や風化層の調査に適用されることが多く，またその簡便性から，研究上の目的で多数の盛土や切土の状態を調査する場合にも用いられています。しかしハンマーの打撃エネルギーが小さいため，調査できる深さは4〜5m以内の表層に限られるなど試験の適用限界について注意が必要です。図中(b)に本試験の活用事例を示しています。同図に示す限界雨量曲線は盛土•切土の耐降雨性能を時間雨量と連続雨量の組み合わせで表しており，鉄道総研で開発した斜面評価手法のひとつです。限界雨量は斜面の地形や地質などさまざまな条件によって異なります。この評価手法でN_d値は地質条件を示す重要な指標の一つとして採用されています。このように，本試験を盛土や切土で実施することで，地盤内部の状態を把握できるだけでなく，試験結果を限界雨量に基づく斜面評価手法に応用することで，対象箇所の耐降雨性能を評価することができます。