インドネシア主要都市における居住者の生活の質の影響要因

摘要

インドネシア主要都市における居住者の生活の質に影響を与える要因を把握することを目的として、バンドン市内のカンボン住宅地を対象とした実態調査とアンケート調査を実施した。得られた知見は下記のとおりである。1)住宅内の相対湿度は一日を通じて比較的高かった。しかし、高湿環境下にあるものの、バンドンの外気温は比較的低いため室内は概ね熱的快適性を満たす範囲にあることが分かった。自然採光、人工照明については、部屋の明るさを十分満たしていない住宅が多かった。カンボンでは、日射遮蔽に対する意識が強い一方で、室内の明るさに対する要求は必ずしも高くないことが見て取れた。また、生活音によって地区内の騒音レベルは全体的に高く、音環境に関しては改善を望んでいるケースが多かつた。2)生活の質に関しては、回答者の約60%が満足していると回答した。住宅分類の向上に伴って満足度が高くなる傾向が見られたものの、評定平均値に有意差は殆ど見られなかった。このことから、生活の質や生活満足度、幸福度の評価には、住宅分類以外の要因も大きく影響を及ぼしていると推察された。3)共分散構造分析の結果、「生活の質」、「生活満足度」及び「幸福度」を含む『幸福度』に最も強く影響する要因は住宅や居住地域に対する『愛着』であることが分かった。『愛着』は『住宅に対する満足度』と『人間関係』に対する主観的評価よつて説明され、これら2つの潜在変数は間接的に『幸福度』に影響する結果となった。その他、『居住環境』、『宗教』、『相互扶助』、『建築属性』、『世帯属性』に関する項目が居住者の生活の質へ影響を及ぼす要因と解釈された。本研究では、特に住宅に関する主観的評価が生活の質の評価に影響を及ぼす傾向が見て取れた。4)生活の質とエネルギー消費量の影響要因を比較したところ、『人間関係』、『宗教』、『相互扶助』に関する変数は、「生活の質」、「生活満足度」及び「幸福度」から成る『幸福度』に影響を及ぼすが、『エネルギー消費量』の増加には影響しないことが分かった。すなわち、これらの3つに関連する項目は、生活の質の向上を妨げることなく、省エネルギーを推進するのに重要な要因となる可能性が示唆された。さらに、住宅の大きさに拘わらずに住宅の質(居住環境)を高めることができれば、エネルギー消費量を過度に増加させずに生活の質を向上させることが可能と推察された。なお、本報では標高600～700mの避暑地的な高原都巿であるバンドンを対象としたため、蒸暑地域本来の高温環境を必ずしも適切に評価できていない可能性がある。今後は、ジャカルタなど標高の低い都市でも調査を実施すべきである。%The purpose of this study is to determine factors affecting QOL among residents in major cities of Indonesia. A survey (n=236) was carried out in the city of Bandung from September to November 2012 for the above purpose, focusing especially on unplanned houses in Kampung. The results showed that approximately 60.1% of the respondents gave positive answers to their QOL on average. The result of structural equation modeling (SEM) showed that ‘happiness' including life satisfaction and QOL can be explained by the levels of 'attachment for house and neighborhood', living environment', 'satisfaction for residence' and 'human relationship', in particular. Further results implied that improvements of 'human relationship', 'religion', 'cooperation in community' and 'living environment' are the keys to achieve energy-saving objectives in these houses without disturbing the improvement of their QOL.