ハエは器用に熱をさける

摘要

ショウジョウバエは熱に弱く，35°Cをこえると動けなくなり，40°Cになると死hでしまう。そのため熱い場所を回避し,25°C程度の場所を好む習性がある。アメリカ，ノースウェスタン大学のサイモース博士らは，温度がことなる4枚の床パネルを敷いた小さな容器にハエを入れ，その行動をパネル間の温度差や勾配を変えながら観察した。その結果，ハエはあたかもそこに壁があるかのように，温度の境界でたくみなUターンをくりかえし，25°Cのパネルにとどまった。この運動は左右の触角の先端が感じる微小な温度差によって制御されているらしく，博士らが同じ機能をもった微小ロボットを使って同じ実験を行ったところ，生体と同じようにふるまうことが確認された。しかし，生体では片側の触角を除去したり,遺伝子操作で触角の機能を喪失させたりしても熱源回避能力がある程度維持されるのに対して，ロボットはうまく維持できなかった。これは，ハエの行動が単純な回路で制御されているのではなく，情報収集や学習によってしなやかに補われていることを示している。