Share金沢

摘要

Share金沢はさまざまな機能を持つ25の建物で構成され，障がい者·健常者·高齢者から学生まで一緒に暮らせる「ごちゃ混ぜの街」である.今までに経験のないひとつ街をつくる計画の手掛かりとして施主と共に学んだC.アレクサンダーのパタン•ランゲージの言葉に大いに刺激を受けた.日く静かな奥，木のある場所，カーニバル，小さな人だまり，動物，小高い場所…….小高い場所は，街の全貌を眺望できる.ここに配置したのは管理•高齢者デイ•生活介護施設と誰もが利用できる温泉•飲食施設(本館)であるが，高齢者デイ•生活介護施設の多目的室を温泉•飲食ゾーンに配置することさえ難題であったことに縦割福祉の限界を感じた.本館の対角には，推定樹齢250年の推の木を中心にした心地よい屋外空間を持つカフエを配置している.敷地内には接道上やむなく6m幅の市道をU字型に引き込んでいるが，街のスケールに馴染んだ路とは言えず，敷地中央に住人のコミュニティ街路をせせらぎと共に設け,住戸の玄関•居間をすベてそこに向け配置している.日常生活でのちょっとした会話や出会い——そういった何気ない場がふんだんにある街を目指し，包括的な計画よりそれぞれの場で繰り広げられるひとつひとつのシーンを大切にしてきた.小川が流れるアプローチ路，推の木を取り囲むカフェデッキ，食事処から眺める街並み，さし向かいの玄関•居間，動物のいる風景等々.すべての棟は平屋建てもしくは2階建てであり，機能別配置によらず，建物の規模や形態に応じ敷地全体に適切に分散配置している.建物の外装は質感のある木材やスチールスパンドレルを主とし，低層の簡素な形態を組み合わせた結果として退屈な街並みにならないように，ハイサイドライトを加え通りに対して妻入り,平入りを混在させることで景観に変化を与えている.この敷地は元もと緑豊かな環境を備えており，こうした緑環境をできるだけ残した配置計画が，街に大きな潤いを与えていると感じている.