月評

摘要

東日本大震災から8年が経過した3月号では，「復興」に関連するプロジェクトが取り上げられ，次いで「リノベーシヨン」の特集が組まれている.復興とリノベーションは，いずれも既存環境の何を保存，継承し，何を再生，創造するかが問われる営みである.それらは.新たなちのを「生成する(つくる)」営みというよりも，既存の環境を資源とみなし，それを活かして未来社会を拓く環境に「変換する（育てる)」営みである.よく考えると，あらゆるデザインは既存の環境の中で展開されるわけであるから，実は環境を変換する営みに他ならず，復興やリノべーションはそのようなデザインの本質を顕在化するのである.特に復興では，災害，事故という思いがけない出来事による環境の変化と向き合い，それを乗り超える創造的な取り組みが求められる.必要なのは，物理的な破壊の修復だけでなく.日常の中に潜在していた社会の諸矛盾をも克服することである.