明石海峡大橋は,兵庫県神戸市と淡路島を結ぶ本州四国連絡架橋事業の一環として1988年に工事着手,1998年に完成した世界最長の吊橋である(表1)。この大橋の特徴は,古くからの好漁場であると同時に国際航路であり1日に1,400隻以上の船舶が航行する海上交通の要所でもあり,最大水深110 mで海底には岩盤が点在,潮流は6ノット(約 3.1m/s)を越える難所となっている幅約4 kmの明石海峡を横断するところである。このため,主塔の支間長を約2 kmと広くとる必要があつたが,当時の日本の最大規模の吊橋は,1km級であり,新技術等を投入し,この約2倍の支間長1,990 m (橋長3,910 m)で当初設計された。日本最長の吊橋の変遷は,1983年の因島大橋(広島県)が770 m (橋長1,270 m),1985年の大鳴門橋(徳島県•兵庫県)が876 m (橋長1,629 m), 1988年の南備讃瀬戸大橋(香川県)が1,100 m (橋長1,648 m)であったことを考えると技術の粋を集めて設計されたことがわかる。また,建設工事が着工されてから両主塔が立ち上がり,メインケーブルの架線作業中の1995年1月17日に明石海峡付近の深さ10〜20 kmを震源としてマグ二チュード7.2の大地震に見舞われた。橋への深刻的な損傷はなかったものの地盤変動の影響で主塔の支間長が1m伸び,1,911mとなった(このため橋長も3,911mとなつた)。このような完成前に未曾有の自然災害に襲われながら,約10年の歳月を経て完成させたことを考えると感慨深い。
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