水害常襲地域における建築的減災対策に見る地域特性に関する研究: 利根川•荒川•大井川及び信濃川•揖斐川•淀川を対象として

摘要

Regional characteristics of flood control construction in flood prone area were analyzed on following 3 aspects. 1. The residence was massive according to the natural levee which was produced by repeated flood damage, and I was finding a suitable location by settlement pattern of like living at separate locations, the line shape and 3 patterns 2. According to the settlement pattern, during each level, also, even if it was put in the level, a step-by-step measure for flood control was performed. 3. The technology of old energy dissipation flood control will be also important from now on.%本研究で水害常襲地域における建築的滅災対策に見られる地域特性の共通性と特異性を明らかにした。その結果を以下に要約する。①全ての集落•地区において、河川流域に生み出された自然堤防ゃ微高地に屋敷が立地し、集落が形成されていた。②集落•地区における減災対策は、沖積平野の氾濫原に4集落が立地し、扇状地に1地区が立地し、集落形態は塊状が2集落、列状が3集落あり、散居状が1地区見られたが、これらの集落立地は地形的特性や土壌条件が影響することで、輪中堤•囲堤の築造の有無が見られた。③5集落で蔵（水屋•水塚）、屋敷林、堀など、水害常襲地域として培ってきた地域特性としての「備え」があり、配置における方位に共通性が見られた。また、1地区では地域的な固有性を反映した自主堤防と配置形態が見られた。④4集落では屋敷の盛土、母屋の盛土、蔵の基壇としての水塚の盛土がなされ、1地区では敷地の盛土は施されずに自主堤防のみが盛土されていた。また、水塚を持つ4集落は過去の水害経験を反映した嵩上げ高さにより敷地•母屋•蔵において二段階あるいは三段階の高さの盛土がなされることで、浸水被害を被らない絶対的な高さが確保されていた。⑤蔵（水屋）は収める物の重要度や利用頻度により収納場所と高さが決められ、食糧や衣類などの保存•保管に利用されると共に、黒鳥集落や柳生新田集落、十六町集落では、水害時には周辺住民の避難場所として利用されるなど地域的な固有性も見られた。また、揚（上）げ舟はすべての集落•地区において見ることができた。⑥塊状集落と列状集落では、集落•地区、屋敷、家屋において三段階の空間的な対応が図られ、散居状集落で段階的な水害対策は見られず、屋敷により、堤防の形状や高さが変えられていることが分かる。⑦地域特性における特異性として、唐崎集落では蔵（水屋）の形態が段蔵と呼ばれる幾重にも連なるものが建てられ、相川地区では自主堤防と呼ばれる個々の屋敷を守る堤防が見られた。以上より、消えゆく建築的減災対策ではあるが、今後水害に強い社会を構築していくためには、地域社会全体の「守り」から各住戸による「備え」まで、多重の構えによる減災対策をとる方法を検討していく必要があると考える。