継続歩行距離と休憩施設の密度基準東京駅および大手町駅周辺地区を対象に

摘要

いま，日本は世界で有数の高齢社会の国である.将来に向けて， 人口に占める高齢者の割合はさらに増加する見込みである.高齢化 が進行すると，自家用車等による移動が困難となる交通弱者も増加 する.とくに，地方部や都心郊外の場合，日常の交通手段に占める 自家用車の分担率は高い.このため，歩いて暮らせるまちづくりに 向けた様々な取り組みがなされている.高齢社会における交通弱者 の問題は，地方部や都心郊外に固有の問題ではなく，都心において も顕在化しつつある問題である.東京などの都心の場合，主な交通 手段は鉄道等の公共交通機関と徒歩である.とくに，東京駅や大手 町駅のように，大規模な交通結節点の場合，徒歩による移動が主で あり，歩行距離は数百メートルとなる場合もある.高齢者が難なく 継続歩行できるほど，ベンチ等の休憩施設（以降，「休憩施設」と記す.）は十分に整備されていない.国土交通省都市局が2014年8月に 発出した技術的助言「健康•医療•福祉のまちづくりの推進ガイド ライン」によると，歩行の継続距離は概ね500mから700mであり， 後期高齢者になると減少する傾向にあるまた，居住地から400m 以内においてベンチ等の総数が多いほど，高齢者の歩行を促す傾向 にある.継続歩行距離を短くする方法として，1)休憩施設の数を増 加させること，2)休憩施設の配置を工夫することなどが挙げられる.ところが，継続歩行距離と休憩施設の数や配置の基準については定 められておらず，両者の関係については，既往研究においても十分 に検討されていない.%Continuous walking distance distribution and density of resting places (e.g., benches) was investigated by applying the nearest neighbour distance distribution. The surroundings of Tokyo central station and Otemachi station were selected as the empirical study area. It was found that (1)the probability that the nearest distance between resting places is longer than 100 m is 0.28； (2) if flower beds are used as resting places, then its probability is 0.14； and (3) if its probability is close to 0, the number of additional resting places is increased to 194 which is approximately 3 times greater than the present number.