大江宏設計神武天皇聖蹟顕彰碑の設計過程文部省技手時代の大江宏の設計活動に関する研究その1

摘要

This study aims to elucidate Hiroshi Ohe's activities in the Ministry of Education and to consider the architectural view of Ohe before World War 2. Hiroshi Ohe (1913-1989) worked as a technician at the Ministry of Education from 1938 to the beginning of 1941 and was involved in the construction of the Jinmu Emperor's honoring monument and the National History Museum. This study collected and analyzed primary materials such as sketches, drawings, and documents created by Ohe during the Ministry of Education's Technical Time, which have been stored in the Ohe Architect's Atelier (formerly Hiroshi OHE, Architect and Associates).%建築家•大江宏（1913-1989)は、東京帝国大学工学部建築学科を 卒業した1938年から1941年初頭まで、文部省宗教局保存課に技手 として勤務し、紀元二千六百年奉祝記念事業の「神武天皇聖蹟の調 査保存顕彰」と「国史館の建設」に携わった。しかし、大江が具体 的にどのような役割を担ったかについては、大江自身の述懐からそ の一端が窺い知れるのみであった。また大江が関わった国史館は、 当初設計競技が予定されており、その意匠をめぐる議論が日本工作 文化連盟を中心として展開されるなど注目をあびた計画であったが、 時局の影響により競技自体が実施に至らず、詳細は不明であった。 大江建築アトリエ（旧大江宏建築事務所）には、大江が文部省技手 時代に作成したスケッチや図面、書類などの一次資料が復数保存さ れており、未発表であった国史館の設計競技規程案も含まれている。 本研究は、これらの資料を新たに蒐集整理、分析することで、大江 の文部省技手時代における活動の実態を明らかとし、戦前の大江の 建築観の考察を行なうとともに、日本近代建築史において重要な位 置にある国史館計画の詳細の一端を明らかとすることを目的とする。