韓国の高齢化率は2016年現在13.2%3)で、日本で高齢化対策を検討し始めた1990年代初期に近い段階にある。しかし、近年、韓国における平均寿命の上昇と出生率の低下傾向は、日本よりも顕著であり、それを背景として、高齢化率は2025年には約20%に達し、2037年には約30%を超えて日本に迫るとの予想3)や、さらに2050年には日本の高齢化率を超える（韓国：37.4%,日本：36.3%)との予想もある。こうした背景から、韓国では老人長期療養保険が導入された2008年前後から高齢者が生活する高齢者住宅及び高齢者福祉施設(両者は根拠法令は異なるが、い、ずれも高齢者のみが集まって住む施設という意味で、以後、随時「高齢者集住施設」という）が持続的に増加しており、今後、高齢者集住施設の迅速な整備は益々、重要な課題となろう。しかし一方で、高齢者は行動及び認知能力の低下により事故予防や災害時の対応が難しい場合が多い。特に高齢者福祉施設では、自力歩行能力の低下した居住者が多く、火災等、迅速な避難を必要とする災害が発生すると、大きな人命被害が生じる可能性が高い。そのため、高齢者集住施設の整備にあたっては、入居者の避難行動能力を把握したうえで、施設の防災計画•設備の基準整備及び管理職員の防災対応能力の養成と防災体制構築のための検討が望まれる。韓国で運営されている高齢者集住施設については、防災基準•体制の整備の基盤となる入居高齢者の災害時行動能力や、災害時に介助可能な職員数と入居者数の関係がほとんど把握できていない。そこで、本研究では、韓国で高齢者の居住を目的に整備された施設について入居者の避難行動能力と災害対応体制の実態調査を行い、日本で病院病棟を対象に行われた同様の調査との比較を通じて、防災計画及び防火管理上の課題を明らかにしたい。%As a basic research for the evacuation safety of Korean elderly residencial facilities, a survey on the actual status of residents' evacuation ability and disaster coping system. The study reveals notable the similarity of evacuation ability of the residents to that of surety department in hospital wards. Also, in case of fire at night, every employee in some facilities should evacuate 20 persons or more. In order to alleviate the burden on the staff, early fire detection and notification are regarded as important, and it is urgent to take disaster prevention measures and adopt disaster prevention facilities in buildings.
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