異なる機能を有する同時期の木造洋風建築の構法的差異に関する研究: 高松市御殿浄水場のポンプ室•事務室•倉庫

摘要

This paper intends to clarify the constructive differences of the wooden western-style architectures in case of the pump room, office, and warehouse at the Goten Water Filtration Plant in Takamatsu City. The pump room was the symbolic facility of modernization. Therefore, that was built by using the most advanced methods of construction of the three: the double Warren truss and the new framing systems. The office and warehouse were built by using the similar western-style design in appearances. However, that construction were almost based on the traditional techniques, modules, and spaces.%日本建築の特徴の一つに多様な地方性があり，かって民家研究でそのことが証明された。近代の木造洋風建築も同様と考えられるが，構法に関する先行論文は，指定文化財や図面資料が豊富な中央の建物に偏っていた。本論文のように，大正年間に地方の建設業者が設計•施工した木造洋風建築（ポンプ室，事務室，倉庫）の構法に差異があることを指摘し，建物の機能との関係を論じた研究は貴重である。木造建築を多数施工してきた地元の建設業者では，住宅（事務室)，工場（ポンプ室），倉庫の用途に応じて構法を使い分けたことが判明する。いずれにしても，木造洋風建築の構法は単一的に進化したのでなく，中央と地方，洋風の部分摂取など，複雑な導入過程を経て，国内に普及していったことが想定できる。加えて，これまで木造洋風建築は意匠の問題として捉える傾向が強かったが，地方における構法技術に着目した点にも本論文の価値を認めることができる。