温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による二酸化炭素およびメタン全球吸収•放出量推定について

摘要

産業革命以降，化石燃料消費や土地利用変化による放出によって，温室効果ガス(GHG ； greenhouse gases)である二酸化炭素(CO_2)やメタン(CH_4)の大気中濃度は上昇を続けている。2013年時点でCO_2の全球平均濃度は396.0±0.1ppm，CH_4は1824±2ppbに達している。これらの値は産業革命以前に比べ，それぞれ142%および253%に相当する。GHGの増加に伴う地球温暖化の進行に対し，気候変動予測を精緻化し，有効な気候変動緩和策や適応策等の環境政策を立案するためには，炭素循環に対する我々の理解を更に深めることが必須である。しかしながら，長期間にわたって，広範囲かつ密に人為起源放出量，および，大気，海洋，陸域生態系それぞれの吸収•放出量を監視するには現在の地上観測網は非常に希薄である。このため，地上観測だけで吸収•放出源の全球分布やその季節変動，領域スケールでの吸収•放出量を推定することは困難であり，その推定値は大きな不確実性を持つ。%The Greenhouse gases Observing SATellite (GOSAT) was launched on January 2009 to measure spatiotemporal variability in column carbon dioxide (CO_2) and methane (CH_4) concentrations over the globe. This paper aims to give an overview of GOSAT observations and applications of the data to inverse modeling of distributions of the atmospheric tracer gases.