SUS630の高温水中SCC挙動に及ぼす長時間熱時効の影響

摘要

SUS630のPWR1次冷却材模擬水中のSCC挙動については,熱時効の影響がない場合,比較的高靱性のH1100とH1150は，試験温度290°C以下であれば高応力(K=30 MPam~(1/2))条件であってもSCC進展は生じないが，400°Cと350°Cで10,000時間までの熱時効により硬化し，SCC進展を生じるようになり,時間とともにSCC進展速度が増加することをこれまでの研究で明らかにした.本研究では,長時間熱時効および温度の影響を調べることを目的に,より低温の320°Cを加えて，20,000時間までの熱時効材についてSCC進展を調べ,またその硬化因子であるCu-rich相の析出,G相の生成,スピノーダル分解と熱時効硬化,SCC挙動の関係について検討した.その結果,比較的高靱性のH1100とH1150は,320°C10,000時間以上の長時間の熱時効により硬化し,またSCC進展速度は増加し始める.この熱時効硬化は,主として熱時効により生成した数nmサイズのCu-rich相と隣接して生成するG相によるものと考えられた.スピノーダル分解は,この熱時効条件では顕著ではなく,硬さおよびSCC進展への寄与は少ないことが示唆された.