谷口吉生： 土門拳記念館

摘要

戦後日本を代表する写真家，土門拳の郷里にある公園内の人工湖に面して建てられた，全作品を収蔵する美術館。豊かな自然の中，水平に広がる人工湖に沿うように低く抑えられたシルエットの建物は，打放しコンクリートと花崗岩によって仕上げられ，多くを主張することなく周囲と融合されている。内部においても同様に，建築空間が作品の背景として配慮されている。内部は二つの空間—展示室とラウンジであり，それらは建物の東西を貫通する一枚の壁によって分けられている。壁は湖面を渡り，美術館を象徴的な存在として見せ,穿たれた開口からは背後の中庭と，さらに奥の展示室の気配をうかがわせる。壁の外側に張り出したラウンジは内向的な展示空間とは対比的に，外部に広がる自然の変化と積極的に向き合う。