桐朋学園大学調布キャンパス1号館

摘要

東京郊外の住宅地の中に、中低層の大学やオフィスビル、商業施設が点在する。近くには神社の緑地や寺院の墓地も広がる。通常、音楽学校は遮音の問題から閉鎖的になりがちな上に、ここではキャンパスとして学生の居場所になる空地を取る余裕もあまりない。そこで、ーかたまりでありながら、周辺環境ともギャップの少ない、集落のようなポーラスな構成を持つ建築が追求された。地上ニ階地下一階の三層構成の、ニ階にレッスン室、地下ー階に大きな音を出すアンサンブル室や多目的に使える音楽室などを配置する。一階は上下のブログラムの余白としてのキャンパス=学生ホールと管理部門。レツスン室は、均等グリッドや通り芯によらす、必要に応じて様々な大きさの部屋を配置する。廊下を音的なバッファーとして扱い、中庭状の外部空間も組み合わせることで、井桁状の壁構造によって内外の関係を音的、視覚的にグラデーショナルにつくつた。地下も同様にサンクンガーデンゃ廊下を入れながらプランニングされる。当然二階と地階でグリッドが異なるが、上下の構造体の交点を鋼管巻きコンクリート柱で接続させている。モダニズムの後に多様性ゃ複雑性の復権が唱えられたが、現代社会の大規模化の中で、合理的につくられるには限界があった。ここでは、ランダムさに対してBIMによって三次元的に整合性を確認しながら調整を繰り返す手法が採られた。結局、魅ヵ的な空間として成立させるには、膨大な人カに頼ることになるのだが、かつて夢見られた思考の可能性が再浮上してくるかもしれない。