補強土構造物だから？補強土構造物こそ？

摘要

我国での本設補強盛土構造物は，1970年代のテールァルメ擁壁が先駆けである。筆者が補強土の研究を始めた1980年代初頭は，補強土工法はこの工法を意味した。その後，ジオシンセティックス補強材ゃ多数アンカー等と剛性•一体性が異なる壁面ェを組み合わせた様々な形式の補強土の擁壁や橋台などが実用化された。しかし，その間常に「補強土工法は従来工法に対してー体何が有利なのか？」と言う根本的な問があった。関連して，®補強土工法は低い建設費が利点，②ジオシンセティックス補強材は剛性が低くクリープ変形が大きいので変形制限が厳しい構造物には適用できない，③壁面ェは盛土のこぼれ出しを防ぐのが目的で簡易なもので十分，など実際には正確とは言えない考え方が広まり，補強土工法の特長の理解を妨げた。加えて，少なからず下記のような補強土構造物の変状•崩壊が生じて，補強土構造物に対する否定的な見解が生まれる要因になった。