上向流移床型砂ろ過による生物学的窒素除去

摘要

下水処理における生物学的窒素除去技術は，循環式硝化脱窒法やステップ流入式多段硝化脱窒法などの生物反応タンクに関する技術が確立され実績を重ねつつある。しかし，これらの高度処理法は，標準活性汚泥法に比べて建設・運転コストが高く，スペースの拡張を伴うため，特に用地の少ない都市部では早急に導入するのは難しいのが現状である。一方，標準活性汚泥法においてもBODやアンモニア対策のため硝化を促進する運転を行い，また懸濁物質（以下SS）の除去を目的として砂ろ過設備が導入されている処理場も少なくない。この砂ろ過設備に窒素（硝酸性窒素）除去機能を付加できれば，省スペースで即効性のある窒素・SSの同時除去システムを構築することができる。そこで，筆者らは上向流移床型砂ろ過に改良を加えることで新しい窒素除去プロセスの開発を行ってきた。本報文では，処理能力150m~3／日規模のパイロットプラントを設置して3ヵ年間の実証試験を実施した結果について報告する。水素供与体としてメタノールを添加することで，ろ過速度245～400m／日（平均300m／日）の条件で，下水二次処理水中の硝酸性窒素を砂ろ過のろ層部で脱窒させることで，処理水T-N濃度を5mg/l以下にすることができた。さらに，既存技術に比べ省スペースで，ランニングコストが同等以下となる窒素・SSの同時除去システムの構築ができることを確認した。なお，本研究は，東京都下水道局の公募型共同研究（平成14～16年度）の成果である。