下水汚泥派生品の普及

摘要

2014年7月に公表された新下水道ビジョンの中では、基本的な考え方である「循環のみち」として下水道の持続と進化を進めることが目標とされている。今日の社会の大きな課題となっている低炭素社会と循環型社会の形成に向けて、両者に貢献できるのが下水道事業である。太陽の力による大規模な水循環の中で、自然が持つ水の浄化機能を促進する役割を下水道は持っている。工業製品あるいはその原料資材を供給する面、あるいは炭化燃料やメタンの生成を通じてエネルギーの低炭素化に貢献する面では下水汚泥が大きな可能性を持つている。2015年12月のパリ協定で世界的に合意されたように、すべての国は温室効果ガスの排出を大幅に削減しなければならない。化石燃料の消費を最小限に抑える社会の実現がこれから必須となる。焼却時に発生する二酸化炭素の排出量がゼロとして扱われるバイオマスのうち、下水汚泥は、都市部で安定的に発生する資源としての重要性が大きい。また化石燃料の消費を伴つて生産される化学肥料などの工業製品を置き換える効果が下水汚泥由来肥料にはあり、二酸化炭素の排出削減に貢献する。