Notes on the Lepturine Genus Pidonia (Coleoptera: Cerambycidae) from East Asia IX Redescripution of Pidonia kurosawai, New Status

摘要

Pidonia amentata kurosawai Ohbayashi et Hayashiは，北海道羅臼産の♂個体に基づいてP．amentata（BATES）セスジヒメハナカミキリの亜種として記載された．副模式標本の産地として，北海道，青森県，秋田県，岩手県，福島県が挙げられている．しかし，これらの標本の具体的な産地，採集日，採集者の記述がなく，長い間，両亜種の区別に混乱が続いてきた．たとえば，中部地方の日本海側地域と関東地方北部に分布する基亜種 amentata の鞘翅斑紋の縮小した個体が，亜種rnkurosawai と扱われた．東北地方各地で同じ花から採集したセスジヒメハナカミキリを比較検討した結果，形態的に区別できる2群を確認した．これら同所性の2群は，基亜種 amentata と亜種 kurosawai に該当した．両者は，それぞれ独立した種と考えられる．P．kurosawai は，鞘翅中央（S）紋が両側ほぼ直線のくさび型で，♂の末端節背板が先端に向かって狭まる長方形で，中側（Lm）紋が♂で線形，♀で広線形で，♂の後側（Lp）紋が消失することでP．amentata と区別できる．東北地方での両種の分布を示した．北部にはP．kurosawai,南部にはP．amentata が分布する．両種の混生が6調査地点で確認された．P．amentata の分布域内の男鹿半島，牡鹿半島とその隣接地域，奥羽山脈の船形山の東麓でP．kurosawai が確認された．最終氷期最盛期以降の2種の分布域の変化について考察した．気温上昇に伴いP．amentataの分布域が北に拡大し，結果として，P．kurosawaiの分布域の後退がおきた．P．amentataが分布を拡大できなかった男鹿半島や牡鹿半島とその隣接地城には，P．kurosawai が生き残り，遺存的分布が形成された．船形山の東麓では，P．amentata とP．kuro-sawai の混生地も確認された．%Pidonia amentata kurosawai of the lepturine genus Pidonia is raised to a species and redescribed. The distributional ranges of P. amentata and P. kurosawai in the Tohoku district, Northern Honshu, Japan are noted. The sympatric populations of these two species are confirmed in the several places of Akita, Iwate and Miyagi Prefectures. The formation of their distributional ranges in the Last Glacial Age is briefly discussed.