デザイン•ドリブン•イノベーション

摘要

筆者は，前職の京都大学（2016年9月まで勤務）にて，工学研究科で土木系教育に携わると同時に，経営管理大学院という専門職大学院で，MBA (経営学修士)の取得を目指す学生たちに「デザイン経営論」という授業を行っていた.経営管理大学院は，学部をもたない大学院であり，学生のバックグラウンドは，経済学部，法学部，工学部，農学部，薬学部，理学部など様々である.修了後も様々な産業分野に進み，中には起業する者もいる.社会人や留学生の比率もかなり高いので，多様な専門性，多様な年齢，多様な国籍の学生が互いに学び合い，日々切磋琢磨をしている.そのような大学院で特にデザィンを専門に学んでいるわけではない学生に対して，デザインに関する授業を行っていたのだが，これがなかなか好評であった.そこでは"デザイン"というものを，経営活動の文脈においてどのように理解し，どのように活用していけばよいかということを"マネジメントの問題"として考えることをテーマとしていた.授業の内容は，経営学の基幹科目である経営戦略論，マーケティング論，組織論，オペレーションズ·マネジメントなどへの理解をベースに，それらと"デザイン"の関係性を理論的，実践的の両面より深く考えていくというものである.座学だけでなく，近年，多くの企業や組織で取り入れられている"デザイン•シンキング"についても学び，そのプロセスを経験し修得することも行っていた.なお，「デザイン経営論」を英語で言うと"Design Management"だが，近年，海外の有名な大学や研究所でも精力的に教育•研究が進められている.