防火地域または準防火地域内の建築物に関する技術的基準

摘要

市街地火災は，わが国の市街地において，古くから繰り返し発生してきた災害である。「建築基準法」(以下，法）では，第61条，第62条に，建築物が火災となった場合に周囲への延焼を防止するための性能(以下，延焼防止性能）に関する要件を定め，その発生の防止を図ってきた。図1は，国内で発生した火災の内容を記録した消防庁の火災報告（2005年〜2014年の10年間分）より，防火地域，準防火地域，およびその他の地域の各地域内で発生した建物火災のうち，出火した建物から隣接する建物へ延焼した火災の比率を抽出した結果を表している（ただし，立地と規摸の関係から，出火した建物が既存不適格と考えられる記録は除外してある）。図1によると，延焼火災の発生比率は，防火地域，準防火地域，その他の地域の順に低く，特に前二者については大きな変動もなく，低位に推移していることが確認できる。戦後しばらくの間，年に数回の頻度で発生していた大火（焼損面積が33,000m~2を超える火災）が，近年はその発生頻度を目立って減らしていることも合わせて考えれば，これまでの法による規制が，わが国の市街地，特に防火地域および準防火地域における延焼防止に，一定の効果を上げてきたことは明らかである。