2015年度日本建築学会技術部門設計競技『自然光を積極的に利用したサステナブル建築の「かたち」

摘要

ある特定の設計要素に着目して建築設計を進めていけば、しばしば建築の新しい「かたち」を産み出すことができると言われます。注目すべき設計要素はさまざま考えられ、環境要素も注目すべき設計要素のひとつですが、国際連合で宣言された「2015年光および光技術の国際年」(IYL2015)に呼応する意味も込めて、ここでは自然光の積極的な利用を取り上げます。自然光を積極的に利用しようとーから設計を進めると、建物の方位、開口のとり方、光をとり入れる仕組みなどによって、自然光がもたらす光環境が大きく変化することに気付き、建築そのものの「かたち」を再検討しなければならないことに気付くことでしょう。自然光を積極的に利用することはまた、サステナブル建築につながると考えられます。電灯照明に依存する時間帯を減らすことができ、一日当たり、一年当たりの電力消費量を減らすことができるからです。しかしながら、光は可視光と同時に熱負荷をもたらすことから、安易に自然光を取り入れることは、逆にエネルギー消費を増やしかねません。サステナブル建築を実現するためには、多面的な評価が欠かせないことになります。自然光を積極的に利用した建築には、町家のように坪庭を有効に活用した住宅、ハイサイドライトや反射ルーバーを活用したオフィス、天窓や頂側窓を積極的に利用した図書館や体育館、幕の拡散光によって外光をとり入れた競技場などが考えられ、建物の規模や用途によって、自然光の利用の仕方にはさまざまなバリエーションがありえます。設計者のアイデアの幅を広げるため、これらの設定は自由とします。この設計競技が、新たな建築のあり方を考えていくきっかけとなれば幸いです。