萩市における歴史文化まちづくりの実践と全国的な町並み保存活動への貢献

摘要

今日、岐阜県白川村や島根県大田市のように伝統的建造物群保存地区（伝建地区）を中心に世界遺産に登録されて多くの訪問者を引き付けている地域や、岐阜県高山市や石川県金沢市のように歴史を活かしたまちづくりで評価を得ている町が全国に展開するようになった。そうしたなかで、町並みや史跡の保存に始まる歴史文化都市である萩市は、歴史的建造物を主軸としたまちづくりを持続的に推進し発展させており、全国に対して先駆的な存在となっている。武家屋敷町である堀内地区と平安古地区、港町浜崎地区、宿場町佐々並市地区という一自治体で四つの重要伝建地区を有しているのは、ほかには京都市と金沢市のみである。地方の小都市である萩市がこれらと肩を並べ歴史文化まちづくりを展開するうえで、21年間の長期にわたって市長の激務をこなしつつ、この取組みを主導してきた野村氏の貢献は極めて多大と言える。野村氏は歴史文化都市としての萩市のまちづくりにおいて、町並み保存を主軸にさまざまな歴史的建造物を活かしていく姿勢を貫いてきた。多様な制度を導入した先駆的な取組みを実践し、常にその範を全国に示すことにより、歴史的建造物を通じた建築文化の浸透と発信に多大な貢献をしている。