パッシブ切替型オイルダンパーの実用化と都市型小変位免震建物への適用

摘要

2011年3月の東北地方太平洋沖地震の発生を受けて、南海トラフで発生が予想される海溝型巨大地震の想定震源域が見直され、また首都直下地震など内陸活断層地震に対しても発生確率の上昇が警告されてきている。海溝型巨大地震では長周期•長時間の地震動の発生が、内陸活断層地震では大振幅のパルス性地震動の発生が危惧されている。このような地震動が免震建物に作用すると、免震層に過大な変形が生じ、周辺擁壁との衝突、免震装置の損傷などが生じる恐れがあることは以前から指摘されている。対策として免震クリアランスを大きくすることが考えられるが、特に都市部などの市街地では、敷地面積の制約から通常必要とされる免震クリアランスさえも確保することが困難な場合が多い。このため、免震層の過大な変形を抑制する技術の開発が望まれていた。免震層の変形を抑制するためには、ダンパーの減衰力を大きくする方法が最も効果的であるが、これによって免震層の変形を低減できても、応答加速度は増加するため、免震性能が低下するという問題が発生する。本技術は、このような技術的課題を解決するために取り組まれたものである。