京都と近代: せめぎ合う都市空間の歴史

摘要

都市史研究は、主に歴史学と建築史学からのアプローチがある。歴史学による都市住民の多様な社会関係等に関する知見と、建築学において明らかにされてきた空間形成およびその変容過程とを、相互に参照する取組みは進みつつあり、都市史研究において空間史といった概念も構築されてきた。そうしたなかで日本が近代化を受容していく過程と一体である近代都市の空間変容においては、近代化への意思や技術の政治性といった政治過程との相互性が見られ、これまでの空間史の方法だけでは近代都市空間の変容は十分にとらえきれない。近代都市が歴史的検証の対象となり、都市史および都市計画史の分野での研究成果が蓄積されつつある状況にはあるが、地方都市についてはまだ十分研究が進んでいるとは言えず、また、日本の近代都市に見られる空間変容と政治過程の相互性については解明されてきていない。