微生物化学研究会espoir目黒/梅澤濱夫記念館　目黒

摘要

微物化学研究所に併設される，海外研究員のための寮施設と，研究所の創設者の記念館からなる建築である。敷地は崖と首都高の通る幹線道路に挟まれ南北に細長く，接道が約60mに対して，奥行きは約5m～9m程度である。プロジェクトは崖上の研究所建替え計画が発端である。その際，崖部分の老朽化した擁壁のつくり替えが必要になり，本建築計画も介わせて行う話に発展した。都市の谷間ともいえる狭あいな敷地の中で，研究所の地盤を支える擁壁と，幹線道路に対峙する建築を融合させる必要があった。長辺方向の耐震壁を擁壁に集約させることで，道路側の構造的自由度を高め，大開口の明るい寮室を実現している。都市に呼応する伸びやかなスラブ表現と，表裏で素材感の異なる繊細なフィンを連絞させ，街にリズムを刻んでいる。アクセントとなる素地べニヤ型枠打放し面の，一見粗雑な木質感が刻々と移り変わる微妙な光の変化を表情豊かに映し出している。住空問に対してはフィンの白い面が，通りからの視線を抑えながら柔らかな光を呼び込み，幹線迫路の喧騒感を和らげている。「触媒」となって環境浄化する微生物のように，街並みと住環境の双方に効果をもたらすたたずまいが，微生物化学研究所の新たな顔となることを目指している。